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山行、同志に示す(草場佩川)

山行、同志に示す(草場佩川詩)

『路は羊腸に入りて石苔滑らかなり。風は鞋底(アイテイ)より雲を掃うて廻る。山に登るは恰(アタカ)も書生の業に似たり。一歩 歩高くして光景開く』という漢詩に出会い、なるほどだなあと感心しています。

登山道は、まさに羊の腸みたいにくねくねと九十九折れに曲がっており、石は苔むして緑の絨毯のように滑らかになっています。

風は、靴の底の方から吹き上げるように廻ってきます。そして、まさに、山に登るのは書生の業にも似て、苦労して登ると、そこには新しい光景(一段と深い理解)が開けてきます。山の写真や映像では絶対に感じられない現実感と達成感は、そこに立ったものだけしか味わうことができないものだとよく言われます。

その達成感は、たぶん、その頂に立つまでの、その人の限界への挑戦による喘ぎと汗まみれの体と、途中の新鮮な湧き水の冷たさや美しい眺望、山野草の花たちとの出会い、それらすべてが重なり合っての出来事が必要なのかもしれません。

そして、山を数えるのに一座、二座と座を付けます。それは、昔から一つの山には一つの神が座ってらっしゃると考え、山を神聖視し、崇拝の対象とする信仰があり、山岳信仰のもとになっています。昔の山伏(ヤマブシ)の修験の場でもあり、険しく厳しい岩場などもあります。まさに書生の業そのものですね。 

                          エイブルの木10月号より