かぎろい
万葉集に「東(ひんがし)の 野にかぎろひの 立つ見えて かへりみすれば 月西渡(かたぶ)きぬ」(柿本人麻呂)と有名な和歌があります。
私は、かぎろいとは、陽炎と思い込んでいました。暑い日差しを受けて、ゆらゆらと景色が揺れて見える現象だと思い込んでいたのです。無知でした。
あるとき、「かぎろいを見る会」のことを聞いて、間違いに気づかされました。
それは、「かぎろいは、日の出一時間ほど前に見られる最初の陽光と言われ、よく晴れた寒さの厳しい日にしか見られない現象」とありました。
陽炎の語源と言われるかぎろいですが、もとは、かぎる火。つまり、ちらちら光る火という意味だそうです。
やはり柿本人麻呂が詠んだかぎろいは、日の出前の光の方がふさわしいようです。
そして毎年、この歌が詠まれた旧暦十一月十七日(今の十二月十日)にこの歌が詠まれた東奈良の阿騎野の丘で「かぎろひを見る会」が催されているそうです。
千三百年以上前の歌、風景、そしてその感動を今もなお、受け継いでいる「かぎろいをみる会」が催されていることに、壮大なロマンを感じます。
まさに、これは宝物ですね。
エイブルの木12月号より
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