尾 花(おばな)
秋の七草のひとつ尾花は、ススキの別名。穂花が動物のしっぽに似ている所からきています。
また、漢字では草が亡びると書いて「芒(ススキ)」、または「薄」とも書くようです。
そんな尾花ですが、嬉野市の大野原高原では、見事な尾花の群生が広がっています。まるで毛糸の絨毯高原のような錯覚を起こしてしまいそうです。
私は、尾花と聞くと、「枯れ尾花」を連想し「幽霊の正体見たり枯れ尾花」につながります。
尾花は、風に揺れると「こっちへいらっしゃい」と誘うように揺れ動きます。
このことから尾花には「招く」という意味があるらしく平安時代の和歌にも詠まれています。
「花薄(はなすすき) まねかばここに とまりなむ いずれの野辺も つひのすみかぞ」(源親元)
昔の野っ原では「野辺送り」というように、人が亡くなるとお棺を担いで行って野辺で荼毘(ダビ)に付すことがありました。
そのような場所ですから、昔の人々は、枯れ尾花が「こっちへおいで」と招き誘うように揺れているのをみれば、あの世からきた幽霊が招いていると思い込み、きっと怖くなって走って逃げ去ったことでしょう。
思い込みこそ怖いですね。
エイブルの木11月号より
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