「秋の夕暮れ」~四季の中で、一番愛される夕暮れは、やはり秋の夕暮れ
歌に詠まれる「秋の夕暮れ」
日本には、四季があってそれぞれに夕暮れは趣があり風情があります。
中でも古来より、秋の夕暮れは好まれて、わびしさ、寂しさのそこはかとなく漂う気配が日本人の情感にピッタリとくるのでしょう。
新古今和歌集には、三夕(せき)の歌と呼ばれて親しまれた「秋の夕暮れ」を結びとした三首の名歌があります。寂蓮(じゃくれん)の「さびしさはその色としもなかりけり槙(まき)立つ山の秋の夕暮れ」、西行の「心なき身にもあはれは知られけりしぎ立つ沢の秋の夕暮れ」、定家の「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮れ」。というように収められています。
枕草子には「秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに」とあります。
以前、小学六年生が「いねたちが 夕やけ空に かがやいて きらきらゆれる 秋の夕ぐれ」と作ってくれました。
このように、十一月は、周りの木々も葉を落とし始め、秋の夕暮れは、夏とは違い、つるべ落としといわれるほどに日照時間も少なく、早く暮れていきます。
そして黄昏時の景色もセピア色。そのことが、さらに人の心を切なくして、感傷的で詩的にさせるのでしょうか。
エイブルの木11月号「エイブルからこんにちは」
エイブル館長 永池 守