菜の花は、春景色の代表格。朧月夜の歌詞や山村慕鳥の詩でも菜の花が主役。
春景色
♪「菜の花畠に/入り日薄れ/見わたす山の端/霞(かすみ)ふかし/春風そよふく/空を見れば/夕月かかりて/におい淡(あわ)し」《朧月夜》と歌われるように「菜の花」は、春景色には欠かせないものです。
山村慕鳥(ぼちょう)の詩、「いちめんのなのはな」のひらがな九文字を全文二十七行のうち二十四行も並べたものもあります。この詩は、教科書にも出ていた記憶があります。まさに、一面に黄色のじゅうたんを敷きつめた春景色を感じ取ることができます。
また、このころは、菜の花ばかりではなく、若葉の美しい季節です。カキ・カエデ・イチョウ、いずれの若葉もいいですが、中でも柳の木の若葉は、木全体がボーッと薄緑色にかすんで、遠くから見ると、まるで薄緑のベールをまとっているかのような見事さです。
さらにこの時期の空気感を、文学では、「かすみ」(朝方のこと)「おぼろ」(夕方のこと)などと言って、ぼんやりと風物がかすんで見える柔らかな様子をいいます。(気象学の術語には「かすみ」・「おぼろ」は無いようです。)
春は、うっとり、穏やかな中で始まるのですね。しかし、人間社会は、新年度のロケットスタート、時間との戦いの中、新しい仕事を遂行しなくてはならない厳しい時期。
でも「忙中に閑あり」視線や想いを自然に向けて見ると、ふっと、いいアイデアが浮かぶかもしれません。
さあ、春を探してみませんか。
エイブルの木 4月号「エイブルからこんにちは」より
館長 永池 守